【イントロダクション】
井上ひさしも永六輔も立川談志も絶賛した、
芸人・松元ヒロの一人語り「憲法くん」を完全映画化―
特定秘密保護法にマイナンバー、集団的自衛権に共謀罪、そして、原発再稼働。そして、次はいよいよ憲法改正。
こういう世の中の流れに対し、「映画は何もしなくてもよいのか?」という止むに止まれぬ想いを抱いて井上淳一監督が出会ったのは、芸人・松元ヒロが20年以上、舞台で演じ続けている、日本国憲法を擬人化した一人語り「憲法くん」だった。
それは「憲法くん」のこんな不安の言葉から始まる。
「ヘンなウワサを耳にしたんですけど、ホントですか? わたしがリストラされるかもって話?」
「憲法くん」はこう続ける。
「わたしというのは、戦争が終わった後、こんなに恐ろしくて悲しいことは、二度とあってはならない、という思いから生まれた、理想だったのではありませんか」
「現実と理想が違っていたら、普通は、現実を理想に近づけるように、努力するものではありませんか」
そして、「憲法くん」は「わたしの初心、わたしの魂は、憲法の前文に書かれています」と憲法前文を一気に暗唱するのだ。
この映画はたったそれだけの、12分の短編である。
しかし、その中には、憲法に対する深い愛と洞察が込められている。
名優・渡辺美佐子が魂を込めて演じる―
「憲法くん」を演じるのは、今年86歳になる名優・渡辺美佐子。
86歳という年齢で、憲法前文を含む12分間もの台詞を覚えるのは並大抵ではなったはず。しかし、戦争を知る世代として、渡辺は「再び戦争の悲劇がこの国に起こらないように」とこの役を演じた。