主題歌:「時代はサーカスの象にのって」(作詞:寺山修司・高取英/作曲:PANTA)

企画プロデュース:木全純治 プロデューサー:片嶋一貴 撮影:鍋島淳裕 照明:堀口健 美術:永澤こうじ 音響デザイン:臼井勝

編集:細野優理子 監督補・特撮監督:石井良和 製作主任:長谷川和彦 宣伝デザイン:大石理紗子 写真:永瀬正敏 村上一成

製作:シネマスコーレ ドッグシュガー 配給:ドッグシュガー 2014/日本/モノクロ/DCP/5.1ch/ビスタ/47分

「瓦礫、瓦礫って言うけど、みんな、生活の一部だったんだ」

原案 永瀬正敏が贈る“喪失と再生の物語”


人っ子一人いない廃墟のような街で男は運河に流れ着いたゴミを拾い集める。

そこに現れる女。

男の日常に微かにひびが入り始める。


『青春ジャック』の木全純治と井上淳一が永瀬正敏の原案を得て、名古屋で撮った“喪失と再生の物語”。

撮影から11年、幻の傑作、ついに全国公開。

劇場情報

東京都 テアトル新宿・・・・・・・・・・・3月7日〜

神奈川県 横浜シネマリン・・・・・・・・・4月12日〜

愛知県 シネマスコーレ・・・・・・・・・・3月29日〜

京都府 出町座・・・・・・・・・・・・・・4月4日〜

大阪府 第七藝術劇場・・・・・・・・・・・4月5日のみ

大阪府 シアターセブン・・・・・・・・・・4月6日〜

兵庫県 元町映画館・・・・・・・・・・・・4月5日〜

山形県 フォーラム山形・・・・・・・・・・4月26日

宮城県 フォーラム仙台・・・・・・・・・・4月26日

福島県 フォーラム福島・・・・・・・・・・4月26日

静岡県 静岡シネ・ギャラリー・・・・・・・3月29日先行上映、4月4日〜

静岡県 シネマイーラ・・・・・・・・・・・3月28日〜

長野県 長野相生座・ロキシー・・・・・・・4月18日〜

新潟県 高田世界館・・・・・・・・・・・・4月19日〜

茨城県 あまや座・・・・・・・・・・・・・近日上映

広島県 シネマ尾道・・・・・・・・・・・・近日上映

広島県 横川シネマ・・・・・・・・・・・・近日上映

愛媛県 シネマルナティック・・・・・・・・3月22日〜

大分県 別府ブルーバード劇場・・・・・・・3月21日〜

宮崎県 宮崎キネマ館・・・・・・・・・・・近日上映

イントロダクション

 『戦争と一人の女』の舞台挨拶で監督の井上淳一とシネマスコーレを訪れた永瀬正敏は、支配人の木全純治よりとある企画の監督依頼を受ける。それは名古屋市内を流れる中川運河という今はもう使われていない運河を舞台とした短篇映画だった。奇しくも中川運河は名作『泥の河』の舞台でもあった。永瀬は「出演はするが、監督は井上さんで」と言い、永瀬主演×井上監督での製作がその場で決定した。

 すぐに訪れたロケハンで、永瀬は映画の舞台となる鉄屑工場と出会い、シャッターを切りまくる。その二日後、井上のもとに永瀬から一本のプロットが届く。それは、誰もいない街の廃工場でひとり筏を作り続ける男の話だった。そこにひとりの女が訪れる――

 井上は永瀬のプロットに、東日本大震災後のイメージをプラスし、脚本を執筆。原発事故後の誰もいなくなった世界に取り残されたような男と女の話を作り上げた。そして、黒澤明の隠れた名作『生きものの記録』と同じタイトルをつける。『生きものの記録』は度重なる原爆実験による放射能の恐怖に怯えた三船敏郎がひとり孤独に狂っていく話だ。井上は「黒澤は狂っているのは三船か、何も感じないお前らか、と観客に問うている。これは三船のその後の話だ」と同タイトルをつけた理由を語っている。また、後年、『箱男』を観た井上は「これは、『箱男』を作れなかった時代の、永瀬正敏による『箱男』ではないか」とも述べている。果たして、その真意は――

 女を演じるのは、『福田村事件』のミズモトカナコ。当時、まだ京都造形大学の学生だったミズモトは永瀬相手に一歩も引けを取らない堂々たる演技を見せている。撮影は、『極悪女王』の鍋島淳裕。過去とも未来ともつかない世紀末的風景をモノクロ映像で見事に捉えている。プロデュースは木全純治。これは『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』コンビの初タッグでもある。そして主題歌は、2023年に亡くなった「頭脳警察」のPANTA。寺山修司と高取英による詩にPANTAが曲をつけた「時代はサーカスの象にのって」がせつなく流れる。

本作は2013年に撮影。当時は47分の短篇を上映する環境になく、翌14年にシネマスコーレのみで公開。しかし、近年、『ルックバック』や黒沢清の『Chime』などのヒットにより状況が変化。24年、井上の師である若松孝二13回忌イベントで上映。そこでの絶讃を受け、ついに全国公開となる。幻の傑作が今ここに蘇る。

キャスト


永瀬正敏

1966年生まれ。

1983年、映画『ションベン・ライダー』(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督『ミステリー・トレイン』(89)で主演をつとめて以降、『アジアン・ビート(香港編)オータム・ムーン』(91/クララ・ロー監督)、『コールド・フィーバー』(95/F.T.フリドクソン監督)、『FLIRT /フラート』(95/ハル・ハートリー監督)など海外映画への出演も多数。台湾映画『KANO~1931海の向こうの甲子園~』(15/馬志翔監督)では、金馬奨で中華圏以外の俳優で初めて主演男優賞にノミネートされ、『あん』(15/河瀨直美監督)、『パターソン』(16/ジム・ジャームッシュ監督)、『光』(17/河瀨直美監督)でカンヌ国際映画祭に3年連続で公式選出された初のアジア人俳優となった。

近年では、『星の子』(20/大森立嗣監督)、『百花』(22/川村元気監督)、『GOLDFISH』(23/藤沼伸一監督)『箱男』(24/石井岳龍監督)など多くの話題作に出演している。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。

ミズモトカナコ

1992年生まれ。

2011年に京都造形芸術大学(現京都芸術大学)に入学後、当時学科長であった林海象監督の「弥勒」(’12)で初めて映画に出演。

以降在学中に、「モーニングセット、牛乳、春」(’13/サトウトシキ監督)、「正しく生きる」(’15/福岡芳穂監督)、「二人ノ世界」(’20/藤本啓太監督)などの映画で、数々のベテラン俳優と共演する。

卒業後は、TVドラマや舞台にも出演し活動の幅を広げ、最近では話題作「福田村事件」(’23/森達也監督)に、オーディションで役を勝取り出演を果たした。

主な出演作に、「戦場へ、インターン」(’17/薮下雷太監督)、「太陽の家」(’20/権野元監督)、「浅草キッド」(’21/劇団ひとり監督)などがある。

スタッフ


PANTA


1968年、ピーナツバターを結成し、ホリプロに一時所属する。69年、千葉正健(元ヴァン・ドックス Key)、PANTA(Vo・EG)、TOSHI(Dr)で、スパルタクス・ブントを結成する。スパルタクス・ブントはPANTAとTOSHIがはじめて組んだバンドである。スパルタクス・ブント解散後、同年12月、頭脳警察を結成。75年12月31日に解散する。76年から77年、PANTA&セカンドで活動。77年から81年、PANTA & HALで活動。PANTA & HALでは名盤『マラッカ』(79年)を発表。その後ソロ活動を経て、通称・PANTAバンドで、82年から89年まで活動する。問題作『クリスタルナハト』(87年)を発表。90年から91年、頭脳警察を再結成。2001年から03年、頭脳警察を再度始動させる。19年、頭脳警察結成50周年を迎えNEWアルバム「乱破」を発表。23年7月7日没。

井上淳一


脚本家・映画監督

1965年愛知県生まれ。早稲田大学卒。大学在学中より若松孝二監督に師事し、若松プロダクションにて助監督を勤める。90年、「パンツの穴・ムケそでムケないイチゴたち」で監督デビュー。その後、荒井晴彦氏に師事し、脚本家に。2013年、「戦争と一人の女」で監督再デビュー。数多くの海外映画祭に招待される。16年、福島で苦悩する農家のドキュメンタリー「大地を受け継ぐ」を監督。フィクション、ノンフィクション、監督、脚本に関わらず、幅広い活動を続けている。19年、「誰がために憲法はある」で第25回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞。23年、「福田村事件」でプロデューサーとしてエランドール賞奨励賞、脚本家として日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞。24年、脚本・監督作「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」が好評を博す。

主な脚本作品、「男たちの大和」(05)「アジアの純真」(11)「あいときぼうのまち」(14)「止められるか、俺たちを」(18)「REVOLUTION+1」(23)ほか。

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